にきび戦略

せっかくのホームページだから、いまさら一般論を羅列するよりは、私自身の目で見たにきびの姿、治療戦略とにきび治療をめぐる正直な気持ちを展開することにしました。
相反するにきび理論
現在の多くの医療機関では、ビタミン剤・抗菌剤を中心とした病理現象派の治療(いわゆる教科書的な西洋医療)およびその理論を発展させたケミカルピーリングやトレチノイン治療を行っています。ホルモン派、肝臓派はどちらかというと、主流派である「病理現象派医療」でうまくゆかなかった患者さんが頼って受診するだけに、主流派の治療、とくに、抗生物質の使用に対しては否定的な立場をとることが多いようです。(漢方・サプリメントについては勉強中です。今回、仮に肝臓派と命名しました。)
病理学的現象派・・・トレチノイン、ケミカルピーリング、抗生物質外用・内服
ホルモン派・・・合成ホルモン内服・外用、抗ホルモン剤、天然ホルモンの補充
肝臓派・・・肝臓の機能を高める生薬、漢方薬、サプリメント
にきびという疾患に対しては、非常に多くの焦点の当て方がなされています。にきびのとらえ方が違うと、治療方法もおのずと異なってき、おのおのの治療に対する批判も生じてきます。多くのにきび病因論を私なりに分類すると以下のようになります。(〜派というのは私の造語です。)
にきびは過剰皮脂と角質増生、さらにアクネ菌繁殖が原因で起こる(病理学的現象派)
にきびはホルモンバランスの異常が原因で起こる(ホルモン派)
にきびは肝臓の代謝能力低下が原因で起こる(肝臓派)
上記のそれぞれの理論に基づく治療は、以下のようになります。(〜派というのは私の造語です。)
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私の治療戦略
私は、現在のところ、十代のにきび患者さんや、にきび治療を始めて行う患者さんには、特に希望がない限り、保険診療でできるビタミン内服、抗生物質内服、抗菌剤外用を勧めています。これは、私がこの治療が最も優れていると思っているからではなく、健康保険がきいて、患者さんの金銭的負担が少ないこと、厚生労働省が認めている治療という意味では最も正統派治療なので、患者さんにとっても医者にとっても安心感のある治療だからです。さらに、にきび治療においては、「安心」は改善のための大きな要素です。また、少なくとも十代の方にとっては、ほかの保険外治療と比べても決して遜色ない効果を発揮します。
二十代以上で、すでに普通の保険診療では効果がうすいという結論に達した方には、ケミカルピーリングやトレチノインをお勧めしています。これらは、実績もあり、効果の高い治療ですが、保険が使えない自費診療になります。また、抗生物質内服期間が長期間に及びそうな方にもお勧めすることがあります。さらに、最近注目しているのが、ホルモンバランスの調整や、内蔵機能を積極的に高める治療です。これについては後ほど述べる予定です。
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にきび、にきび治療と年齢
なぜ、年齢が高くなるにつれて、抗生物質を中心とする治療が効かなくなってくるのでしょうか。この話に入るに先立ち、にきびの進行度と治療方法を整理して見ましょう(図参照)。にきびは、皮脂腺の活動が活発になり、たまった皮脂に菌がついて膿がたまるという経過を取ります。この課程の結果および進行要素として、炎症がかかわってきます。いったんたまった皮脂や膿は排出されない限り消えません。病理学派的にきびの治療は大きく分類すると、
A)にきび進行を抑制する治療(保険診療のほとんどの治療法、クリンダマイシン、VCLなど)
B)内容物の排出を助ける治療(トレチノイン、ケミカルピーリング、レーザー圧出など)
C)にきびあとを予防する治療(VCローションなど)
D)にきびあとを直す治療(TCAピーリングなど)
に分類できます。
にきび治療図版
若い人のにきびは、「進行を食い止める治療」だけで治ってしまうことが多いのですが、年齢が上がるにつれて、食い止める治療に加え、「中身を出す治療」が必要になってゆきます。 これは、主に皮膚の老化に関係していると私は考えています。皮脂や膿がいったんたまると、これらは排出しない限り治りません。「排出」という課程は、皮膚がどんどん生まれ変わって、下のほうから押し出すという形で起こるので、10代の患者さんのように皮膚のターンオーバーが盛んな人は、皮脂腺貯留・膿の形成という反応を抑制さえすれば、たまったものは自然に排出されます。しかし、20代も半ばを過ぎると、内容物を排出する力が弱くなり、皮脂や膿がいつまでも皮膚に貯留し、慢性炎症の状態を作り、これがさらに次のにきびを呼んでしまうと考えています。20代以上の方で積極的にトレチノインやケミカルピーリングの治療を行う必要が生ずるのはこのためであると考えています。
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あまりにもナイーブなあなたへ
にきび患者さんを治療していて感じるのは、非常にナイーブで繊細な方が多いということです。にきびそのものや治療そのものによるストレスすらが悪化要因になっているように見える方もけっこういらっしゃいます。にきびで悩む、悩みがストレスとなってにきびを悪化させる、さらにまた悩みが深くなる・・・・こんな悪循環に陥っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。逆に、治療を始めて少しうまくゆくと、心が晴れやかになり、その状態がさらににきび改善を促す、という、正の心理状態もにきび治療の成績と関係があるようです。つくづく、患者さんと良い関係を作ってゆくことが大切であると思わざるを得ません。
さらに、にきび治療の難しいところは、おなじ「にきび」として現れる皮膚疾患にもかかわらず、その背景は患者さんにより千差万別であるところです。そのため、すべてのにきび患者さんに即刻有効な治療法というものはありえません。現在「これが絶対効く」といわれている治療方法でも、何割かの患者さんにとってはまったく有効でなかったり、治療をしているにもかかわらずにきびが悪化することもあります。私がにきび悪化の悪循環をあまりよく認識していなかったころには、患者さんの治療経過中ににきびが悪化してなすすべもなく悪循環にはまってしまったこともありましたが、最近は立ち直りが早くなりました。治療する側としては、入念なコンサルテーションを元に、患者さんのにきびの背景を推察し、見当違いな治療を漫然と続けぬよう、良い方向に導いてゆくことがもっとも大切なことではないかと考えています。また、患者さんにとっては、この世に万人に効くにきび治療が存在しないことを理解し、にきび治療とは、まずは、自分に合う治療探しの旅であるとの認識をもって、自分の治療を選び取る目を持っていただきたいと思います。
私は、患者さんが何らかの治療を始める際、はじめの約1ヶ月は「お試し」と考えています。効くべき治療ならば、1ヶ月も行えば何らかの手ごたえがあるはずです。1ヶ月やっても効果が明確でない方には、もう一度話し合って、継続するか、ほかの治療を模索するかを検討します。患者さんとしては、効くことが100%保障されていない治療であっても治療費は請求されるわけですから、「お試し」にどれだけの費用を割くことが妥当かをよく考え、清水の舞台から飛び降りるような思いをしないようにするのが懸命なのでは・・・と、気の弱い私なぞは考えてしまいます。
外来に患者さんの少ないときにたまたまいらっしゃってくださったにきび患者さんとは、ついつい話し込んでにきび談義となってしまいますが、混み合っているときには、正直、ごめんなさいと言いたい気持ちです。近々にスケジュールを整理して、にきびについてじっくりと話し合える予約診療を開きたいと思っています。
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にきびあとってなに?
よく、「赤いにきびあとが・・・」という相談を受けますが、赤みは「にきびあと」とはいえないと思います。にきびのピークを過ぎてまだ残存する炎症、または、にきびの最後の裾野であると考えています。この炎症状態が長期間残存すると、新しいにきびもできやすいので、結果としては、にきびそのものが消えきらない状態にあることが多いようです。また、赤みがなかなか引かない方は、皮脂の分泌が非常に盛んな多いようです。したがって、治療法としては、
1.炎症抑制
2.にきびそのものの治療
3.皮脂分泌抑制
の3点、(要するに、すべて、にきび治療そのものです)を行うしかないでしょう。
純粋なにきびあととは、炎症が終わったあとに、比較的長期間にのこる色素沈着と陥没のことをさすと考えています。
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にきびあとの治療方法
20代前半までのにきびは、色素沈着(しみ)が生じても自然に消失する可能性が高いように見えます。逆に、20代後半からは、にきびあとのしみがかなり長期間残り、定着する確率も高くなります。これは、やはり、若い人は皮膚のターンオーバーが早く、あっという間にしみを追い出してしまうのに対し、年齢を経るに連れて、しみを追い出す力がなくなるからでしょう。炎症が消えてから2ヶ月以上残っているしみは、トレチノインによるしみ治療の対象と考えて良いと思います。
にきびあとの陥没の多くは、10代のころにできたにきびの跡です。回復力の高い若い皮膚では、膿によって壊された組織が十分に埋まる前に創傷治癒が完成してしまい、結果として、穴があいてしまうと私は考えています。20歳過ぎてからのにきびでは、色素沈着になっても、陥没することはめったにありません。
さて、にきびあと陥没に対して大学ではアブレージョンをやっていましたが、私はあまりこの方法が好きではありませんでした。というのは、アブレージョン法では、穴と穴の間の正常な皮膚をも激しく削り、しかも、にきびあとの深い瘢痕は最後まで残るなど、病変部を効果的に治療しているとは思われませんでした。また、アブレージョンのあとは、全体としてかすかにくぼみますので、狭い範囲の人ほど目立ってしまいます。というわけで、いろいろほかに方法を求めて到達したのが、部分的TCAピーリングです。これは、トリクロロ酢酸というピーリング剤をにきびあとの穴の中にだけ丹念に塗りつける方法です。合計3回ほどの治療で、くぼみの中に組織が充満してきます。そして、何よりも良いところは、正常な皮膚を傷つけないところです。
この方法は、いわゆるアイスピック型と呼ばれる深いにきびあとに威力を発揮します。埋めるべき体積が少ないだけに、非常に効果的な穴の埋まり方をします。とくに、穴の周辺の皮膚が盛り上がっていない場合は、たとえ穴が広がったとしても、周囲の皮膚との段差が目立たないので、「平らになった」との印象を得やすいようです。しかし、同じアイスピック型でも、周囲の皮膚が堤防状に盛り上がっているタイプの穴では注意が必要です。通常、新しい組織が盛んに作られると、穴の直径を多少広げる傾向があります。穴の周辺の皮膚が堤防状に盛り上がっている穴では、(堤防の頂上まで組織が埋まるわけではないので)この結果、「穴が広くなった」と受け取られがちです。
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古くて新しい・漢方とサプリメント
最近最も注目しています。根気が要るけど、根本的な体質改善は、実はにきび治療の本筋なのではないかと考えています。患者さんからも少しずつ理解を得られ、もう少したったら、この項を埋められるようになると思います。
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